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健診のお知らせと、テレビの前のお口ぽかん
学校歯科健診で前歯の並びを指摘されました。帰宅後、テレビを見ているお子さんの口が開いていることに気づきます。春先からの鼻づまりも続いていて、「口呼吸のせいだったのでは」と考え始めた保護者の方もいるのではないでしょうか。
口呼吸は歯並びに関わる可能性がありますが、それだけで原因は決められません。
この記事では、家庭で見ておきたい様子、耳鼻咽喉科と歯科に相談する順番、受診時に確認されることを順に整理します。
この記事の要点まとめ
- 口呼吸は前歯や噛み合わせに関わる可能性がありますが、顎の大きさや生え替わりなど複数の要因も関係します。
- 鼻の症状が落ち着いた後も、日中や睡眠中の口の開き、いびきなどを記録し、受診時に伝えましょう。
- 鼻づまりやいびきは耳鼻咽喉科・小児科、前歯や噛み合わせは歯科へ相談し、治療は診察結果や成長に応じて検討します。
子どもの口呼吸は前歯の並びに影響しますか?

影響する可能性はあります。ただし、前歯が乱れた原因を口呼吸だけに絞ることはできません。
研究で示されているのは「口呼吸のお子さんの集団に、ある傾向が見られる」という関連です。目の前のお子さん一人ひとりの原因を示すものではありません12。
舌と唇の位置が変わると、前歯には何が起こり得る?
鼻で息をしているとき、舌は上顎の内側に触れ、唇は軽く閉じています。口が開いた状態が続くと舌は下がりやすくなります。前歯を外側から押さえる唇の力も弱まりがちです。
この状態が成長期に続く場合について、いくつかの関連が報告されています。上の前歯が前に出る上顎前突(出っ歯)や、歯が重なって並ぶ叢生(そうせい)に関わることがあります。上下の前歯が噛み合わない開咬(かいこう)に関わることもあります。
ここで紹介した位置関係は、しくみをイメージするための一般的な説明です。診断の基準ではありません。
口呼吸だけで顎の幅や歯がガタガタになると決まる?
決まりません。上顎の歯列の幅や口蓋(上顎の天井部分)の深さは、お子さんによって異なります。歯並びが気になる場合は、医師にご相談ください。
歯が重なってガタガタになる叢生(そうせい)には、次のような要素も関わります。
- 歯の大きさと顎の大きさのバランス
- 生え替わりの時期
- ご家族から受け継いだ顎の形
- 指しゃぶりや、舌で前歯を押す癖
小学1年生ごろは乳歯と永久歯が混ざる混合歯列期です。一時的に隙間や傾きが目立つこともあります。
ポイント
口呼吸は、歯並びに関わる要因の一つです。「口呼吸を見過ごしたから」と一つの理由に結びつけず、ほかの要因と合わせて確かめていきます。
口の乾きや噛み合わせも一緒に見るのはなぜ?
口が開いている時間が長いと、口の中が乾きやすくなります。朝の口臭が気になったり、唾液が汚れを洗い流しにくくなってむし歯や歯ぐきの炎症が気になったりすることがあります。
食事中の様子も手がかりになります。口を開けたまま噛む、片側ばかりで噛むといった様子からは、口周りの筋肉の使い方が見えてきます。
とはいえ、噛む力の強さや口の開き方だけで、原因や治療の要否は決められません。 口呼吸は顔の骨格の成長とも関連が報告されています1。そのため、乾き・噛み方・噛み合わせを並べて見ながら、呼吸、舌や唇、歯列のどこから確かめるかを考えます。
鼻づまりによる一時的な口呼吸と、続く口呼吸はどう見分けますか?

判断材料になるのは、鼻の症状が落ち着いた後も、日中や睡眠中に口が開いているかどうかです。
家庭での記録は診断ではありません。受診したときに様子を具体的に伝えるためのものです。以下の観察の目安も、研究から導かれた診断基準ではありません。
起きているときは、どんな場面と頻度を記録する?
口が開きやすいのは、食事中、テレビや動画を見ているとき、宿題などに集中しているときです。次の点をメモしておくと、受診先で状況を伝えやすくなります。
- 口が開いていた場面と時間帯
- そのとき鼻づまりや鼻水があったか
- 風邪や花粉の時期と重なっていたか
見分けたいのは、風邪の間だけ口が開くのか、鼻の症状がない日も毎日のように見られるのかという点です。「何日続いたら習慣」と日数だけで決めず、鼻の症状と重なっているかどうかを残しておきましょう。
寝ている間のいびきや呼吸は、どこを見る?
寝入ってしばらくした頃や明け方に、そっと様子を見てみてください。確かめたいのは次のような点です。
- いびきをかいているか
- 口を開けて眠っているか
- 呼吸が止まったように見える場面があるか
- 何度も寝返りを打ったり、目を覚ましたりしていないか
朝の寝起きの悪さや日中の眠気、集中力の続きにくさも、睡眠の質を考える手がかりになります。
呼吸が苦しそうに見える場合や、息が止まるように見える場面が繰り返される場合は、歯並びの相談を待たずに小児科や耳鼻咽喉科へ相談しましょう。スマートフォンで短い動画を撮っておくと、診察で伝えやすくなります。
口呼吸はやめたほうがいい?鼻づまり中に口を閉じさせてよい?
鼻で息がしにくいまま口を閉じさせることは勧められません。先に、鼻で呼吸しにくい理由を確かめましょう。
就寝時に市販の口閉じテープを使う方法も見かけます。鼻づまりがあるお子さんへの使用は控え、使うかどうかは医師に相談してください。呼吸の練習や「口を閉じて」という声かけも、鼻の症状が落ち着いてから考えるほうがお子さんの負担になりにくいでしょう。
ポイント
口を閉じさせる前に、まず鼻で楽に息ができるかを確かめます。この順番を守るほうが、親子ともに無理なく進められます。
鼻づまりと前歯の並びが気になるとき、何科に先に相談しますか?
鼻づまりやいびきが続いているなら耳鼻咽喉科、学校健診で前歯を指摘されたなら歯科にも相談します。症状ごとに分けて考えると整理しやすくなります。
両方が気になる場合でも、一方を受診すればもう一方が不要になるわけではありません。なお、ここでの分け方は研究で検証されたものではなく、受診先を選ぶための実用上の目安です。
| 気になる様子 | 相談先の目安 |
|---|---|
| 鼻づまり・いびき・息が止まるように見える | 耳鼻咽喉科(または小児科) |
| 前歯の並び・噛み合わせを指摘された | 歯科(矯正歯科) |
| 両方が続いている | 症状の強いほうから受診し、もう一方にも後日相談 |
仕事を休む日数を抑えたい場合は、息苦しさなど症状の強いほうから受診しましょう。その結果を持って次の受診先へ進むと、同じ説明を繰り返さずに済みます。
鼻の症状が目立つ場合、耳鼻咽喉科では何を伝える?
次のような点を伝えましょう。
- 鼻づまりがいつから続き、どの季節に強いか
- 片側がつまるのか、両側か
- いびきや睡眠中の様子
- 日中に口が開いている場面
アレルギー性鼻炎や、アデノイド(鼻の奥にあるリンパ組織)の肥大といった可能性は、診察で確かめるものです。口呼吸があるというだけで病名が決まるわけではありません。
歯科では口の開き方と前歯をどう確認する?
歯科で確かめるのは、主に次のような点です。
- 鼻で息ができるか(聞き取り)
- 唇を自然に閉じられるか
- 舌の位置や飲み込み方
- 生え替わりの進み具合
- 歯列の幅、噛み合わせ、顎の成長
口呼吸と骨格・歯列の関連が報告されていることを踏まえ、こうした点を総合して評価します12。必要に応じて、口腔内写真、頭部のレントゲン(セファロ)、3D口腔内スキャナーによる歯型の記録などを行います。何を調べるための検査なのか、説明を受けてから進めるのが一般的です。
当院に限らず、記録した歯型や画像について説明を受ける際は、見ながら疑問点を尋ねると理解しやすくなります。ただし、歯科の確認だけで鼻の病気は診断できません。 鼻の症状が気になる場合は、耳鼻咽喉科での診察とあわせて考えます。
両方に相談するとき、診察結果をどう共有する?
次のものを一つにまとめて持参すると、付き添いの回数を増やさずに済みます。
- 家庭でのメモや動画
- 学校健診の結果のお知らせ
- すでに受けた診察の結果や、処方された薬の内容
受診先では、たとえば次のように尋ねてみてください。
- 鼻の治療と並行して、歯並びの確認を進めてよいか
- 次に受診する科へ伝えておくことはあるか
- どのくらいの間隔で様子を見せればよいか
子どもの口呼吸は治せますか?矯正治療はすぐ必要ですか?
原因に応じて、鼻の治療や口周りの機能への対応を検討できます。ただし、口呼吸が改善すれば前歯の並びが自然に整う、とは言い切れません。
また、相談したからといって、すぐに矯正治療を始めるわけではありません。相談は、成長や症状に合わせて進め方を考える機会と捉えてください。
鼻の治療・口周りの練習・矯正は、どの順で考える?
鼻で息がしにくい場合は、まずその原因を確かめます。そのうえで、状態に応じて次の対応を検討します。
- 鼻の症状が落ち着いても口を開ける癖が続く場合:舌や唇の使い方を整える口腔筋機能療法(MFT)。口周りの筋肉のトレーニングです。
- 歯列や噛み合わせのずれがある場合:拡大装置などを使う小児矯正
呼吸を改善する手術の後の歯列の変化には個人差があります。治療後の歯列については医師にご相談ください。
一つの対応だけで整う範囲には限りがあります。どれを組み合わせるかは、相談しながら決めていきます。
学校健診で指摘された前歯は、いつ矯正相談をする?
指摘を受けた時点で相談して構いません。相談と治療開始は別のもので、まずは今の状態と成長の見通しを知ることが目的です。
当院に限らず、矯正相談では歯並びだけでなく、口呼吸や舌の癖、姿勢など歯並びに影響する要因にも目を向けます。成長の段階を見ながら、急がずに進め方を考えます。相談の結果、経過観察を選ぶこともあります。
装置や通院について、相談前に何を尋ねる?
装置は、マウスピース型の装置やワイヤーなどから選びます。選ぶ際には、歯並びの状態、むし歯のなりやすさ、お子さんの負担を考えます。計画どおりに進まないときにどう見直すのか、治療後の後戻りにどう備えるのかも、遠慮なく尋ねてください。
小児矯正は原則として自由診療(公的医療保険が適用されない診療)で、費用は医療機関によって異なります。
乳歯と永久歯が混ざる時期に行う小児矯正(第1期治療)は、治療期間やその後の経過観察の期間に個人差があります。装置の調整などのための通院間隔や回数も状態によって異なります。費用の総額は、検査・診断料、装置料、調整料などを含むかによって変わります。治療の見通しは医師にご相談ください。
永久歯が生えそろった後に本格的な矯正(第2期治療)が必要になった場合は、第1期治療とは別に費用がかかることがあります。第2期治療の治療期間や通院間隔、通院回数には個人差があります。費用は、ワイヤー装置などの装置料、調整料、保定装置料などの扱いによって異なります。第1期治療の費用を差し引いた額で設定する医療機関もあり、計算方法は医療機関によって異なります。当院の費用は診察のうえでご案内します。治療の見通しは医師にご相談ください。
次のような点を受診先で確認しましょう。
- 検査・装置・調整の費用がどこまで含まれるか
- 第2期治療に進んだ場合の費用の考え方
- 通院の間隔
- 家庭で取り組むこと
装置による違和感や痛み、歯みがきがしにくくなることによるむし歯のリスクについても、事前に説明を受けておくと見通しを持てます。
通院については、仕事や習い事の予定と両立できるかも含めて、相談してみてください。
よくある質問
Q. 口呼吸に気づくのが遅れたのは、親の見落としでしょうか?
A. 口が開く様子は、日常の中では気づきにくいものです。歯並びには、歯と顎の大きさのバランスや生え替わりなど、多くの要因が関わります。そのため、口呼吸だけを理由に結びつける必要はありません。気づいた今の時点から、様子を記録して相談につなげれば十分です。
Q. 歯並びは父親から遺伝しますか?
A. 顎の形や大きさなど、ご家族から受け継ぐ要素はあります。ただし、歯並びは呼吸、舌や唇の癖、生え替わりなども重なって決まります。遺伝だけで説明することはできません。ご家族の歯並びで気になる点があれば、相談時に伝えてください。
Q. あいうべ体操や風船遊びは、家庭で先に始めてもよいですか?
A. 鼻で楽に息ができる状態なら、遊びの延長として取り入れる方法もあります。ただ、鼻づまりがある時期に無理に行うと、お子さんの負担になることがあります。始める前に歯科医師や医師に相談し、お子さんに合ったやり方を確認しましょう。
Q. 小学生になってからの相談では遅いですか?
A. 小学校低学年は乳歯と永久歯が混ざる時期で、顎の成長も見ながら相談しやすい時期といえます。相談したからといって、すぐに治療を始めるとは限りません。経過を見ながら進め方を決めていきます。
参考文献
1. Zhao Z, Zheng L, Huang X, et al. Effects of mouth breathing on facial skeletal development in children: a systematic review and meta-analysis. BMC Oral Health. 2021. PMID: 33691678 / DOI: 10.1186/s12903-021-01458-7
2. Lekvijittada K, Uengkajornkul P, Changsiripun C. Dental arch dimension and palatal morphology in children and adolescents with mouth breathing: a systematic review and meta-analysis. BMC Oral Health. 2026. PMID: 42026531 / DOI: 10.1186/s12903-026-08349-9
3. do Nascimento RR, Masterson D, Mattos CT, et al. Dentoalveolar alterations after interventions to relieve mouth breathing: Systematic review and meta-analysis. Journal of Orofacial Orthopedics. 2026. PMID: 39815054 / DOI: 10.1007/s00056-024-00568-5
・ロンドン大学クイーン・メアリー校歯学部留学
・岡山大学歯学部歯学科卒業
・岡山大学病院研修医
・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 歯科矯正学分野修了 歯学博士
・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 歯科矯正学分野 医員
・海部津島たんぽぽ矯正歯科クリニック
・名駅MA矯正歯科
(マウスピース専門の矯正歯科医院)
その他、名古屋、大阪を中心に複数の歯科医院で矯正
歯科専門医として勤務
歯科医師、歯学博士
日本矯正歯科学会認定医
インビザライン認定医
予防歯科認定医(ジャパンオーラルヘルス学会)
<所属学会>
日本矯正歯科学会
日本顎変形症学会
中・四国矯正歯科学会
ジャパンオーラルヘルス学会
<受賞等>
2015年 先端歯学スクール
岡山大学歯学部大学院生の代表として参加
2016年 岡山歯学会奨励論文賞受賞
2017年 日本矯正歯科学会の認定医試験、最高評価A
2020年 「歯科矯正用アンカースクリューを用いた矯正歯科治療アトラス」に治療症例が抜粋される
<論文、学会発表>
“Topical Application of Lithium Chloride on the Pulp Induces Dentin Regeneration.”
K Ishimoto, S Hayano, T Yanagita, H Kurosaka,
N Kawanabe, S Itoh, M Ono, T Kuboki, H Kamioka, T Yamashiro
歯の組織の発生メカニズムを応用して再生医療の臨床試験につながる研究結果を英語論文にて報告しました。
その他、臨床論文、学会発表多数
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